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腰椎椎間関節痛の治療について

みなさんはぎっくり腰とよく言われますが、それは病名ではありません。症状を表す言葉ですね。ぎっくり腰の原因はいろいろありますが、多くはヘルニアや狭窄症による脊髄の急性炎症か、椎間関節の急性炎症です。今日は、椎間関節痛についてご説明します。

腰は5つの丸い骨が縦に並んでいますが、一つ一つの骨は、椎間関節というところで結合しています。左右一つずつあります。よって合計10個の関節があるわけです。

関節とは、肘、手首、膝、足首など、曲がるところを関節といいます。腰は、椎間関節が自由に動くために、複雑な動きができるのです。小さな関節がたくさんあって、前、後ろ、左右などに自由に動いているのです。その小さな関節の中には、髪の毛のような神経が入り込んでいて、その神経が炎症を起こすと、ぎっくり腰になるわけです。機械を長年使っていると、よく動くところは変形したり錆びたりしますよね。それと同じで、人間も長年腰を使っていると、関節に変形が生じて、すべりが悪くなります。若いときは、身体も柔らかく、自由に動きますが、年を取ると、身体は硬くなり、関節はぎしぎしした動きになりがちです。摩擦が大きくなって、関節の中の神経が傷むのもわかりますね。親指の腹くらいの大きさですが、1か所炎症が起こるだけで、痛くて身動きできなくなります。顔も洗えず、トイレに入っても、おしりも拭けない状態になります。

しかし、病院を受診しても、レントゲンを見た先生方は、異常がないと言われます。MRIを撮っても異常がないと言われます。これは、レントゲンやMRIに椎間関節の異常は映らないからです。炎症が起こっていても、神経が傷ついていても、画像では異常に映りません。整形外科では、あまり椎間関節炎という概念がなく、原因がはっきり告げられないまま、鎮痛薬を処方されます。

ペインクリニックでは、痛みの経過や症状、身体所見などから、椎間関節の炎症を疑うと、レントゲン装置を見ながら、正確に、この小さな関節の中に、局所麻酔薬と炎症止めのステロイドを注射します。もし、ここが痛みの原因であれば、かなり痛みが軽減されます。

若い人であれば、それほど関節の変形も強くないため、1回ですっかり治ることもあります。しかし、高齢になると、すでに関節は「錆びている」状態なので、1回の注射ですぐ治るということもありませんが、短くても数日はずいぶん楽だったと言われる結果が得られます。もし、ここが原因ではなかったら、まったく効果がなかったという返事が帰ってきます。つまり、ブロック注射をした結果を聞いて、診断をつけていくのです。診断と治療が一緒になっています。

ご高齢者では、すぐに治ることは難しいですが、何度も治療を続けることで、やはり痛みは軽減し生活しやすくなります。

もし、ぎっくり腰になったら、ぜひ当院を受診してください。腰の痛みはとてもつらいものです。体力も消耗します。ご高齢者では、やる気もなくなり、寝たきりになってしまいます。一日も早く痛みを軽減して、元気な生活を取り戻しましょう!

院長 松永 美佳子

腰部脊柱管狭窄症のペインクリニックでの治療法について

前回は、腰椎椎間板ヘルニアについて、ペインクリニックで行っている治療法について、整形外科との違いなど説明させていただきました。腰部脊柱管狭窄症は、ヘルニアより多い疾患です。高齢になるにつれ、脊髄という一番大事な神経の周りの組織が変形をした結果、脊髄を圧迫するようになります。脊髄の周囲の血管も圧迫され、血流不足になります。脊髄から下肢に伸びていく神経も傷がつき、坐骨神経痛が起きるようになります。少し歩くと、脊髄への血流不足から、腰や下肢に痛みやしびれが起き、血流が回復するために、いったん休憩を余儀なくされます。尺取り虫のように、歩いては止まり、歩いては止まりを繰り返すようになります。

こんな時、ペインクリニックでは、神経ブロック注射を行います。
最も得意とする分野です。ペインクリニックで行う注射は、基本的に血流をよくする注射が多いです。脊髄を包んでいる硬膜外というスペースに局所麻酔薬を注入すると交感神経ブロックが起こり、腰や下肢の血流がよくなります。血流がよくなると、神経の炎症や傷が治りやすくなります。その結果、痛みが改善するのです。

薬でも、炎症を抑えたり、痛みを感じにくくする薬がありますが、様々な副作用もあり、長期的に服用するのはお勧めではありません。
ブロック治療は何度繰り返しても安全です。肝臓や腎臓、胃腸を悪くする心配はありません。脊髄の周りの変形した組織が、元に戻ることはありません。なぜなら、人間は若返ることはできないからです。
年々古くなることはあっても、勝手に若返ることはないのです。ですが、ブロック治療によって、傷めつけられている神経を修復し、少しでもいい状態で維持することはできます。古くなった機械が故障なく長持ちするように、人間の身体も、痛みがなく長持ちすることが可能となります。

医療が発達し、高齢化社会となった日本ですが、長生きしても、腰も足も痛くて、寝たきりになっているようでは、長生きしている意味がありません。いくつになっても、自分らしく生きていくために、
早くからメンテナンスを心掛け、足腰を大切にしていきたいものです。

院長 松永 美佳子