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帯状疱疹の痛み(その2)

宿主(あるじ)の免疫力が落ちて、活動を再開した水痘・帯状疱疹ウイルスは、長い神経に沿って、どんどん増殖を始めます。そして、その途中、皮膚にも顔を出してきたものが水疱です。神経の通り道に、長い帯状の水疱が出現するため、帯状疱疹と呼ばれます。帯状疱疹の特徴としては、水疱が皮膚に出る前に、ほとんどの方が痛みを感じることです。

原因不明の痛みに、多くの患者さんがあちこちの病院や診療科を回っているうちに、皮膚に出た水疱に気づいて「帯状疱疹だったのか」ということになるのです。この時点で、いずれの診療科で診察を受けても、抗ウイルス剤というウイルスを殺す薬を処方されます。この薬を1週間ほど服用することで、ほとんどのウイルスが死んで、それ以上広がらなくなります。この薬がなかった時代は、どんどんウイルスが広がって重症になっていました。現在、昔ほど重症化しなくなったのは、新たな抗ウイルス薬が開発され、それを早く投与されるからです。

抗ウイルス薬投与後、ウイルスは徐々に鎮静化され、1ヶ月もすると皮膚は治ったようになってきます。しかし、困ったことに痛みがなかなか取れないということがおきます。

一般的に、怪我をした時に、傷が治らないうちは痛みも伴いますが、傷が治ってくると痛みもおさまってくるのが普通です。我慢強い日本人は、もう少ししたら治るかも・・・と待っていますが、なかなかよくなりません。そうです、待っていても治らないのです。待っていればいるほど、神経の傷は古くなり、治らなくなるのです。

神経に傷がついて、変性すると、様々な誤作動が生じます。軽く触っただけでも「痛い」という間違った情報を頭に送ります。また、やけどのような痛みや刺すような痛み、ぎゅ~とねじられる様な痛みなど、様々な痛みが勝手におきます。

痛みの教科書には、慢性化した帯状疱疹の痛みを「帯状疱疹後神経痛」と名付け、治らない難治性疼痛と位置付けています。発症から3~6か月程度経過すると、帯状疱疹後神経痛に移行します。まだか、まだかと良くなるのをじっと待っていると、あっという間に3か月が過ぎ、治らない領域に突入していくのです。そうならない前に重要になるのが、神経の治療である神経ブロック治療なのです。

・・・次回は、神経ブロック治療についてご説明します。

院長 松永 美佳子

帯状疱疹の痛み(その1)

帯状疱疹(たいじょうほうしん)の患者様がよく来院されます。帯状疱疹はお年寄りがかかる病気と思われがちですが、意外にも50代、60代の方も多く来られます。中には30代の方もおられます。

帯状疱疹にかかると、多くの方は皮膚科を受診されます。皮膚に現われた帯状疱疹の水疱を見ると、一見、皮膚の病気と思いますが、実は、帯状疱疹は神経の病気です。子供のころに感染した水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが、長期間、脊髄から出る神経節に潜んでいて、体力が弱った時に帯状疱疹として発病します。このため、帯状疱疹を起こすウイルスを、正式には水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルスと呼びます。このウイルスは、ほんとに長年、体内で一緒に生きているんですね。驚きです。

体のどんな場所でも神経節はありますから、ウイルスはどこの神経でも発病します。診察していて、疱疹が多いと思う場所は、胸のあたり、顔の額のあたり、お腹のあたりです。帯状疱疹は、身体の奥深くの神経から発症し、神経を伝って広がっていきます。身体の神経は、右と左とちょうど2つにわかれているので、体の半分だけに広がります。不思議と反対側には広がりませんが、上下には広がります。抗ウイルス剤の服用が遅れると、上下に広がり、重症化することが多いです。帯状疱疹ウイルスは、皮膚に顔を出すだけではなく、身体の奥深くにも感染していくようです。お腹にかかると、腸の動きが悪くなり、腸閉そくになるときもあります。

ところで、どんなにひどく感染しても、約1ヶ月くらいすると、皮膚はかなりきれいになってきます。いかにも、治った感じです。しかし、痛みが続く場合が多いのです。いったいどうしてでしょうか?

・・・次回は、痛みについてご説明しようと思います。

院長 松永 美佳子

腰椎椎間板ヘルニア

腰は、5つの椎体という大きな骨と、間に挟まれたクッションである椎間板で構成されています。椎間板の外側は線維輪と呼ばれる組織で保護されていますが、重たい物を持ち上げるなど腰に強い負荷がかかったとき、線維輪が損傷を受けることがあります。線維輪が損傷を受けると、内部に存在する髄核が椎間板の外へ飛び出てしまいます。脊柱管には馬尾という神経が通っていますが、これらの神経にヘルニアが当たると、神経に傷がつき、腰や足の痛み、しびれが生じます。重いものを持つことが多い職業の方や、肥えている方などは腰への負担が大きく、ヘルニアになりやすいと言われています。

レントゲンでは、ヘルニアがあるかどうかわかりません。腰椎MRI を撮影するとよくわかります。どの場所にどの方向にどのくらいの大きさで突出しているかどうかで、痛みの場所や強さ、治りやすさが違ってきます。

一般的には、投薬を受けますが、投薬だけより、神経ブロック治療を行うと、かなり楽になります。突出した椎間板はもとの場所に引っ込みません。少し小さくなるにも数か月かかります。ずっと飛び出したままのときもあるし、きれいになくなるときもあります。やや小さくなるときもあるし、逆に大きくなってくるときもあります。痛みは神経の炎症が治まれば楽になります。ヘルニアが同じ大きさで存在していても、神経の傷がよくなれば、かなり普通に生活ができるようになります。まったく気にならなくなるときもあります。しかし、また何らかの負担が生じたときに、再発することがあります。その繰り返しで上手にお付き合いできる場合も多いです。そうしたお付き合いをするには、神経ブロック治療をしながらお付き合いするほうがいいです。神経ブロック治療は、傷んだ神経の周りの血流をよくします。そうすることで、自分で炎症を治す力が強くなります。決して、神経に麻酔をかけるわけではありません。神経を根本的に治療する方法です。

痛み止めを何種類も長期間服用することは副作用が心配です。しかし、神経ブロック治療は何度受けても薬が他の臓器に副作用をもたらすことはありません。身体にとっても、とてもやさしい治療法なんです。

ヘルニアは9割弱の方が切らずに治ると言われています。しかし、つらい時間が長引くのは生活を送る上で問題です。神経ブロック治療をしながら、少しでも痛みを軽減し、完治するまでがんばりましょう!注射がきらいな方、お気持ちはわかりますが、そんなにつらい治療法ではありません。ぜひ、一度ご相談ください。

院長 松永 美佳子