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ペインクリニックについて(その1)

ペインクリニックという言葉をご存じでしょうか?

当院のホームページをご覧の方でしたら、当然知っているのではないかと思いますが、世の中では、あまり理解されていない言葉ではないでしょうか?

仕事で他院に電話して、受け付けの方に「千里ペインクリニックの松永ですが」と言うと、たいてい、ペインクリニックという言葉が通じないため、何度も言い直すことになります。また、今まで1,000件以上患者様のご自宅を訪問してきましたが、ピンポーンとインターホンを押して、「千里ペインクリニックの松永ですけど~」と言うと、「えっ、クリーニング屋さん?要りません」と言われたりしました。「いえいえ、ペインクリニックの・・・」「えっ、クリーニング屋さん?要りませんよ」「いえいえ・・・ちょっと待って」なんて会話があったりしました。15年も開業していて、ペインクリニックという言葉がやっと最近になって通じやすくなってきたなと感じていますが、まだまだ市民権を得ていない気がします。

ところで、ペインクリニックとは、麻酔科の中から発生した専門医集団ですが、その歴史は浅く約50年です。日本ペインクリニック学会では、痛み治療を担う専門医を育成し、1989年より「ペインクリニック専門医」として認定しています。現在、その数は1,600名近くとなり、年々増え続けています。

「ペインクリニック専門医」となるには、麻酔科を初めとする専門医を取得後、指定するペインクリニック研修施設で一定期間、痛みに関する知識と技術の習得に努める必要があります。そして、研修後は、基礎系(解剖、生理など)、臨床系(ブロック手技、薬物療法、チーム医療の実際など)の両分野に亘る試験を受けて合格しなければいけません。さらに、専門医資格を維持するため毎年、麻酔科学会に出席し、単位を集め、お金を払い苦労しています。麻酔科の専門医の資格を失うと、ペインクリニック専門医の資格までなくしてしまいます。なので、私は麻酔科医ですが、手術の麻酔を15年以上かけていません。

内科、外科、脳外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻科、皮膚科、眼科・・・、病院にはたくさんの専門科がありますが、ペインクリニック科を掲げている病院は非常に少ないです。ペインクリニック科とは言えず、麻酔科と掲げて中身はペインクリニックというのが一般的です。

ペインクリニックの専門医といえども、病院では、麻酔業務の傍らにペインをするといった感じで、最近は麻酔科医不足なので、どこの病院もペインクリニックは縮小傾向で、つぶれていっています。そんな暇があったら、手術場で麻酔をかけろと言うのが病院側の意見です。そんな肩身の狭い思いをするのがいやになると、開業することになります。さて、次回はペインクリニックではどんなことをするのかお伝えしましょう。

院長 松永 美佳子